ラグビーワールドカップに代表されるように日本では多くの国際的なイベントが今後予定されています。(東京オリンピック、ワールドマスターズゲームズ、大阪万博など)
多くのインバウンド需要が見込まれる中で、世界からの来訪者に対するおもてなし対応について悩まれている事業者様が多いのも事実です。
今回はその中でも特に悩みの多いムスリム(イスラム教)対応について学べるセミナー『ムスリム対応セミナー基本編』を2019年11月6日に行いました。2018年の6月に続き2回目です。
昨年の様子はこちらの動画をどうぞ。
会場は今回の共催でもあるキッコーマン食品(株)近畿支社。
今回は飲食店、カフェ、外食産業向けを中心に案内をかけさせていただいたのですが、宿泊業やIT系サービスを展開されている方など非常に幅広い業種の方にご参加いただきました。ありがとうございます。
ムスリム対応 基礎講座
弊会からは代表の梶川がイスラム教、ムスリムに関する基礎知識やムスリムインバウンド、対応方法等についてご説明させていただきました。
ムスリムに対するお悩みの中で非常に多いのが下記のような内容です。
「イスラム教徒とかムスリムとか聞くけどどうしらいいのかよくわからない・・・」
「ウチはお酒があるから、イスラム教徒は絶対に来てくれないでしょ?」
「イスラム教徒に対応したら、日本人のお客さんが来なくなるのでは?」
イスラム教徒(ムスリム)の方は宗教上の理由により豚肉やアルコールを摂取されない方が多いですがその判断基準は人により異なります。その為、今までイスラム教に馴染みの少なかった日本では情報が錯綜し、「何から手をつけて良いかわからない」という方や「ハラール認証がないと絶対に出来ない」と思い込んでいらっしゃる方が多くいらっしゃいます。まずはその誤解から解いていく事が大切だと弊会では考えております。
続いて統計的なデータを元にムスリムの市場についてご説明させていただきました。今回はその中でもインバウンドに注意が行きがちですが在日ムスリムの市場についてもお話しさせていただきました。在日ムスリムにしっかりと目を向ける事がムスリムインバウンドでは重要になってきます。
大まかなムスリムに対する知識を学習した上で、実際の対応について。ここで出てくるのが「ハラール」と「ハラーム」。この解釈によって躓かれる事業者様が非常に多いので丁寧にご説明させていただくと共に実際のムスリム旅行者の食事や礼拝に対する状況についてお伝えさせていただきました。
最後に情報発信について。ムスリムの受け入れ態勢を完了させる事に最初は注力するので、その後の広報活動の事をおろそかにしてしまう事例が多いのですがインバウンドを行う上でムスリムに限らず英語での情報発信は必須です。特にITツールをフル活用する事がとても大切です。無料で出来る物から有料の物までそれぞれ特性を理解して使い分けていきましょう。
情報発信の方法に関しては色々ある中で、以前弊会では「facebook広告」についてお話しさせていただきました。その他の情報発信の方法も併せてご相談がございましたら是非弊会にご連絡ください。
FOODPICT
続いて共催であるネクストダイバーシティ(株)の奥社長から食品成分を可視化するフードピクトについてご説明いただきました。
「フードピクト(FOODPICT)」とは、食物アレルギーや健康上の理由、宗教戒律等により、食事の際に食材を確認しなければならない人のために開発された食品表示の絵文字で、日本語の理解が十分でない外国の人だけでなく小さなお子さんにとっても理解しやすいものとなっています。
世界にはハラール以外にもヴィーガン、コーシャなど、食のルールを持つ人達がたくさんいます。この食の多様性に対してどうやって対応していくかはもちろん、対応していることを相手に伝えるにはどうしたらよいかについての解決策として同社では上述のFOODPICTの提案をしています。
現在、奥社長の提供されているフードピクトは有名ホテルや飲食店だけでなく、行政機関の運営する避難所でも利用されています。
インバウンドの拡大は国策であり今後は日本の企業も世界のスタンダードを意識していかなければ生き残っていけない時代が来るという流れの中で、様々な食に関するコンサルティングをネクストダイバーシティ(株)では対応しております。
おいしい記憶をつくりたい・・・キッコーマン食品(株)
最後のご登壇はキッコーマン食品(株)・業務用営業部部長である堀様から「ムスリムでも安心して食べられる調味料について」お話していただきました。
同社ではハラール認証を取得した「ハラール醤油」の製造販売を手掛けています。
基本的に醤油の製造には小麦と大豆と食塩水を用い、小麦を元にアルコール発酵を行うので通常の醤油はハラームだと考えるムスリムもいます。この小麦を使わずに発酵を行う独自製法によって生まれたのがキッコーマン食品の「ハラール醤油」。しかも同時にグルテンフリーの条件も満たす事を目標とした為、開発には相当の手間と時間を費やしたそうです。
単純に基準を満たすだけではなく、従来のキッコーマン醤油が持つ鮮やかな色、コクとキレのバランスの良い味、華やかな香りを継承する代表的な濃い口醤油を表現する為に何度も何度も試験を繰り返し、やっと完成にたどり着いたそうです。
ハラール醤油を用いての試食会
座学が終了した後、今回の ムスリム対応 セミナーの目玉である試食会にも多くの方が参加いただけました。
実際にキッコーマンのハラール醤油を使用し、ムスリムも食べられる食材を使用しての調理を担当してくださったのはキッコーマン食品(株)の社員の方々。ご協力ありがとうございました。
以下、今回の料理メニューの一部です。
今回の試食会では通常の醤油との違いを比べていただく為に、同社の通常の醤油もご用意していただきました。
食のプロ達からは様々なご意見を頂戴いたしましたが一番多かったご意見は「普通の醤油と食べ比べをしたけど全く違いがわからない程クオリティが高い。個人の味の好みのレベル程度まで持っていってるのは凄い事だと感じました。しかもグルテンフリー。現場で検討する良い材料になりました。」でした。
最後に
前回に引き続き今回第二回となる「ムスリム対応セミナー基本編」。
インバウンド需要が拡大していく中で世界で約16億人とも言われるムスリムへの対応は重要になってきます。今回のセミナーを通じて新しい一歩を踏み出される事業者様が増えてくだされば嬉しく思います。
今回のセミナーを企画いたしました弊会、ネクストダイバーシティ(株)、キッコーマン食品(株)の三社は引き続きそういった事業者様の支えとなるべく、活動してまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします。
ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。