今、日本にどのくらいのイスラム教徒(以下、 ムスリム )の方がおられると思いますか?
昨年の訪日外国人旅行者数のうち、
マレーシアからは前年比12%増の約44万人
インドネシアからは前年比30%増の約35万人
とムスリムの多い東南アジアの国からの訪日外国人旅行者が大幅に増加しています。(JNTO調べ)
もちろん、中東アフリカからの観光客数も増加傾向にあります。
観光客以外にも、留学生や日本企業に就職したムスリム、また結婚を機に改宗した方もおられ、在日ムスリムは10-20万人いると言われています。
もはやイスラームは「遠い国の宗教」ではありません。
私達の隣人、また今後の海外からのお客様への対応として「ムスリム向けの対応」抜きには考えられません。
しかしその一方で、どうしたらいいのかわからない、例えば、
ハラール認証がないと何も食べてくれないのではないか…
ムスリムフレンドリーとハラールってどう違うの?
そもそも、ハラールって何?
といった不安の声もよくお聞きします。
そこで、今回はいったん基本に立ち返り、「ムスリム対応の基礎知識」として、イスラム教の簡単な基礎知識から、ムスリムの方を受け入れる上で知っておきたい情報を中心にお話しいたしました。
また、既にムスリム対応している、大阪・京都・神戸の店舗やサービスの現状、すぐに使える具体的な対応策も併せてご紹介させて頂きました。
基礎から学べる ムスリム おもてなし対応講座
今月の定例会は弊会理事の宮下が登壇させていただきました。
今回は初めて参加される方が多く、
「急に担当する部署でムスリムの人達と関わる事になって情報不足で困っていました。」
「知り合いにハラール認証を取った方が良いと言われたが本当にそうなのかわからない。」
といった悩みをお持ちになられていた方が多かったです。
まず基本的な所から。
世界のムスリムの人口や分布、六信五行、ハラール・ハラームなどについてお話させていただきました。
ムスリムのお話をする際に、必ず我々が強調してお伝えさせて頂いている事は「ムスリムだからといってみんな同じではない」という事です。日本人も地域や環境によって習慣や文化などが異なるようにムスリムも個性豊かで色々な人がいます。決め付けをするのではなくおもてなしをする方一人ひとりに柔軟に対応する事が大切です。
次にムスリムの方が日本に来て何がしたいかと何を不安に思っているかについて。
期待については2018年5月に観光庁から発表された「訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プラン」に記載されているアンケート結果をご紹介させていただきました。どこまでを日本食と考えるかは人によるでしょうがやはり多くの方は「日本的な料理」を楽しみにしているようです。
不安については2018年4月にUAEのドバイで行われた「アラビアントラベルマーケット2018」にて弊会代表の梶川が行ったアンケート結果を元にご説明させて頂きました。
訪日ムスリムの期待と不安がわかったところで我々はどうすべきか・・・これについては弊会のHPのトップでもご紹介している観光庁の「ムスリムおもてなしガイドブック」が非常にコンパクトにまとまっているので一度基本的な事を知る上で読まれる事をお勧めいたします。そこにはまず出来る所から順番にステップアップしていく事、そして自分達の対応状況をしっかりとムスリムに伝えて判断してもらう為の情報開示の方法や英語のテンプレートなど役立つ情報が網羅されております。誰でも無料にダウンロードできるPDFファイルですので基礎知識を勉強される上で参考にして下さい。
礼拝スペースについても具体的な設置の方法を実際の導入事例を元にご説明させて頂きました。最近では兵庫県の姫路駅周辺にも礼拝スペースが設置されましたので併せてご参照下さい。
ムスリム受入対応からは少し話はそれますが、飲食関連の方には大切なお話として新しく導入される事が決まった「HACCP(ハサップ)」についても軽くご紹介させて頂きました。HACCPについての詳しい事は最寄の保健所にお問い合わせください。
最後に関西のムスリム受け入れ体制の現状について代表的なお店と共に色々な事例のご紹介。
対応するに至ったこれまでの経緯、お店の売りやムスリムの利用状況、お店の雰囲気や平均予算、テーブル数などをお時間許す限りご紹介させていただきました。(もっと話したかったですが・・・)
本定例会には旅行会社の方も参加されており、送客する上での参考にもしていただきました。
総括
関西のムスリム受入体制はここ数年で随分と変わりました。それは住まわれているムスリムの方とお話する中でも感じる事が出来ます。
しかしまだまだムスリムをおもてなしする上では十分とはいえないのが現状です。ムスリムの事について知らない、わからないといった人の方が圧倒的に多いです。
今回のようなセミナーを通じてそういった方のムスリムへの理解が深まり、私たちに何が出来るのかを少しずつでも見つけていく事がおもてなしの体制をつくっていく第一歩ではないかと思います。
弊会は今後もこのようなセミナーを通じ、ムスリムにとって住みやすく、訪れやすいまちづくりの実現を目指してまいります。
当日ご参加いただきました皆様、本当にありがとうございました。