はじめに

近年の日本では外国人労働者の受入れが進み、働ける業種も拡大しています。

飲食店など、これまでフルタイムでの外国人雇用が難しかった業界でも外国人を正社員として雇用するようになりました。

外国人労働者に関する制度も動いており、2019年に特定技能が始まり、最近では技能実習制度を廃止して育成就労制度を始めることが決まっています。

そこで今回の定例会ではムスリム(イスラム教徒)が多い国の人材登用を検討される方への情報提供として「海外ムスリム人材登用セミナー第1弾・バングラデシュ編」を開催いたしました。

バングラデシュからの人材登用に焦点を当て、送り出し機関や日本での雇用環境について専門家の講師をお招きして詳しくお話いただきました。

 

セミナー講師の紹介

講師は、有限会社 大光サービスの代表取締役専務である山根秀之氏。

山根氏は、大阪市立大学を卒業後、双日株式会社(旧⽇商岩井)に入社し、ベトナム駐在時代にODAプロジェクトを通じて国際協力・社会貢献の意義を学びました。

帰国後は、リネットジャパングループ社でJICA・環境省と連携し、国際協力活動と新規事業開発に従事し、カンボジアで自動車整備に特化した送り出し機関を立ち上げました。

現在はバングラデシュで「人材育成と送り出し」、「自動車部品の再生」という社会問題解決を目的とした事業に取り組んでいます。

 

大光グループについて

大光グループは、有限会社大光サービスを中心に、⼤光電機株式会社や有限会社ミツ・トレーディングといった関係各社で構成されており、主要な事業としては「自動車部品の再生事業」を手掛けております。

この「自動車部品の再生事業」を行うにあたり海外の現地人材を育成してきた経験を元に、バングラデシュの人材を育成し、日本で海外人材を必要としている企業に送り出す事業を展開しています。

 

新制度「育成就労」とは?

2024年3月15日、日本政府は技能実習に代わる新制度「育成就労」を新設する法案を閣議決定しました。今国会に提出され、成立すれば2027年までに施行を目指します。この制度は、日本での人材育成と人材確保を目的としており、特に労働力不足が深刻化している日本社会において、外国人労働者の受け入れをさらに促進するものです。

「育成就労」制度は、育成就労産業分野において特定技能1号レベルの技能がある人材の育成と、人材確保を目的としています。特定技能1号へ移行するための技能習得をイメージするとわかりやすいかもしれません。

技能実習から育成就労へ

現行の技能実習制度では、技能実習生は実習期間中に転職することが認められていませんでした。しかし、育成就労制度では1〜2年の就労後に転職が可能となると言われております。これにより、労働環境が合わない場合でも柔軟に対応できるようになり、失踪なども減ると予想されています。

育成就労の詳細

新たな在留資格として「育成就労」が新設され、この資格での就労期間は原則3年と定められます。この期間中に一定の技能を身につけた外国人労働者は、より高い技能レベルを必要とする「特定技能」に移行することが容易になります。特定技能「1号」は最長5年間就労が可能で、その後は一定の技能水準に達していれば在留期間の上限がない特定技能「2号」への移行が可能です。「2号」になると、家族を日本に呼び寄せて一緒に暮らすこともできるようになります。

監理支援機関と転職仲介業の規制

技能実習生の受け入れを支援する監理団体も、今後は「監理支援機関」として名称が変更され、その許可基準も厳格化される予定です。また、転職するケースが増えることを見越し、転職仲介業への監督も強化されるでしょう。不法就労を斡旋した場合の法定刑も引き上げられ、悪質なブローカーの排除を目指すことが確認されています。

送り出し機関の役割

「送り出し機関」とは、日本での就労を希望する外国人に対して、現地で日本語教育や職業訓練を行う機関です。これまでは技能実習生の育成が主な役割でしたが、最近では特定技能外国人の養成も行うところが増えています。新制度「育成就労」においても、現地の養成機関として重要な役割を担うことが予想されます。

特定技能制度では、監理団体を通さずに各企業が直接雇用で外国人を受け入れることが可能となったため、送り出し機関から直接特定技能外国人を紹介されて受け入れる企業も増えています。これにより、送り出し機関との関わりを持つ企業も増加していくことが予想されます。

新制度「育成就労」により、外国人労働者の受け入れがさらに進み、日本の労働力不足の解消に寄与することが期待されます。

 

Amin Tours & Travelsについて

Amin Tours & Travelsは、バングラデシュの首都ダッカに本社を置き、1999年から送り出し機関として活動している⼤⼿送出機関です。

これまでに累計7万人以上の労働者を送り出し、特にマレーシアや中東諸国への送り出し実績があります。

大光グループはこのAmin Tours & Travelsと合弁会社「Amin Daiko Bangladesh」を設立し、日本向けの送り出し事業として現地での日本語教育と職業訓練を提供しています。

 

Amin Daiko Bangladesh 日本語訓練センター

2024年2月、Amin Daiko Bangladeshは日本で働きたい若者向けの日本語教室を開講しました。

高卒生150名の応募者の中から選抜された25名が、全寮制で毎日8時間の日本語学習を行い、N5・N4レベルの日本語能力試験合格を目指しています。

この訓練センターは、特定技能試験の現地合格も意識したカリキュラムを提供し、将来的な育成就労制度に備えています。

 

なぜバングラデシュなのか?

バングラデシュの特徴

バングラデシュは人口が多く、若者も多い国です。20代の人口は日本の2.5倍。求める候補者が集まりやすい労働市場という事が出来ます。

隠れた送り出し⼤国であり、海外で労働する⽂化が醸成されています。とりわけ、建設、農業など、体⼒の必要な仕事に対し、耐性があるのも特徴です。

また、バングラデシュは世界有数の親日国家であり、日本に対する憧れが強い国です。

さらに、日本語はベンガル語と文法が似ているため、学習しやすい言語とされています。

まだまだ所得が低く、東南アジア諸国と⽐較して、⽇本で稼ぎたいという意欲が強いのも特徴に挙げられます。

労働者の特性

バングラデシュの労働者は、まじめで温和な性格、我慢強さと忍耐力を持ち合わせています。また、細かい作業に根気よく取り組むことができ、縫製業が盛んです。

英語力も高く、数学的思考にも強いという特徴があります。

これらの特性から、バングラデシュの労働者は日本での雇用に適していると評価されています。

 

質疑応答

セミナー後の質疑応答では、参加者から多くの質問が寄せられました。

特に、イスラム教徒であるバングラデシュ人労働者の宗教的な習慣に関する質問が多く、山根氏は礼拝の時間確保や食事の配慮など、具体的な対応方法を詳しく説明されていました。

また、送り出し機関の教育体制と、日本での管理体制についても詳述し、企業が直面する課題とその解決策について議論が交わされていました。

 

総括

今回のセミナーは、今、日本が直面している問題である労働人口不足への解決策として外国人労働者の確保に関する現状と共に、今後増加が予測されるバングラデシュからの外国人労働者を受け入れる際の具体的なステップやコスト、制度について詳しく学べる機会となりました。

特に、外国人労働者を受け入れるにあたって送り出し機関との連携や現地での教育体制の重要性が再認識されました。

参加者からは、「具体的な情報が得られて非常に参考になった」との声が寄せられました。

企業は外国人労働者の受け入れ準備を進め、労働力不足の解消に向けた具体的な施策を講じることが必要となってきます。その中で、特にムスリム人材の登用においては、宗教的な配慮を忘れず、長期的な雇用関係を築くことが重要です。

今回のセミナーがその一助になる事を願っております。

ご参加くださいました皆様、本当にありがとうございました。